第8章

山田澪は唇を噛んで、しばらく彼をじっと見つめてから、ようやく決心がついたかのように彼の服の端を離した。

彼を追い越して階段を下り、リビングのソファまで行くと、身をかがめてコーヒーテーブルの下の引き出しを開けた。

北村健も彼女の後を追って来て、見ると、引き出しの中には離婚協議書が静かに収まっていた。

ずっと前から置いてあったのに、北村健は気づかなかった。

彼はこの引き出しさえ開けたことがなかった。

彼は突然、山田澪の方を見た。目には驚きと困惑が満ちていた。

山田澪は真剣な目で彼を見つめ、伝えたい言葉は全て目の中にあった。

離婚しよう。

北村健は突然笑った。怒りからの笑いだった。...

ログインして続きを読む