第97章

山田澪はその場に立ち尽くし、手足をどこに置いていいかわからなくなった。彼女は自意識過剰な道化のようだった。

「そのままでいい」北村健は淡々と言った。

山田澪は頷き、黙って書斎を出た。

背後から夏目彩の声が聞こえてきた。「明日の発表会に付き合ってくれるって約束したでしょ。ドタキャンしないでよ」

「ああ」

「昨日配信したら、数百万円稼いだのよ。すごいでしょ?」

「すごいな」北村健はいい加減に褒めた。

「それに芸能事務所からスカウトされたの。行くべきかな?私、芸能界でやっていけると思う?」

「行きたければ行けばいい。投資は俺がする」

それ以降の会話は山田澪には聞こえなかったし、聞...

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