第百十七章

「千枝? 何してるの?」

 母親の声に、千枝は慌ててスマホを置いた。悠が絶対に来ませんように、と心の中で祈りながら。

 なぜだか分からないが、悠と付き合っていることに、どうしても後ろめたさを感じてしまう。

 最初は一夜の過ちから始まり、その後上司と部下の関係になった。これをどう説明すればいいのだろう。

 それに、和也と別れてすぐに悠と付き合い始めたのだから、いわゆる「乗り換え」だと思われても仕方がない。

 自分でも信じられないくらい、悠に対する拒絶反応は全くなかった。

 和也と付き合っていた頃、手を繋がれると嬉しい反面、どこか違和感を覚えることもあった。

 もしかしたら、和也が...

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