第52章

「九条社長、私、大丈夫です。残業できますから」

千枝は慌てて立ち上がり、おずおずと悠の顔を窺った。先ほどの会話をどこまで聞かれていたのか、気が気ではない。

悠が口を開きかけたそのとき、タイミングよくレストランから夜食のデリバリーが届いた。

千枝はそそくさと受け取りに行き、密かに胸を撫で下ろした。

彼女は料理を一つずつ悠のデスクに並べた。

「九条社長、夜ご飯を抜いたら胃を悪くしますよ」

じっと悠を見つめ、彼が食べ終わるのを見届けてから自分の席に戻ろうと心に決めた。

悠は書類に目を落としたまま、適当に手をひらひらと振る。

「友達と約束があるんだろう。先に上がれ」

千枝が動こうと...

ログインして続きを読む