第58章

千枝は身体をこわばらせてその場に立ち尽くしていた。好奇心や軽蔑、そして何より野次馬根性に満ちた同僚たちの視線が、痛いほど突き刺さってくる。

確かに遅刻はこれで二度目だ。だが、悠を看病するために病院へ行っていたなどと正直に言ったところで、人事部が正当な理由として認めるはずがない。むしろ彩華に弱みを握られるだけだ。

彩華は苛立たしげに言い放った。

「あなたはもう九条社長の秘書じゃないわ。会社は新しく役員秘書を募集するから、部外者はさっさとこの会社から出て行ってちょうだい」

足を止める同僚も少なくない。中にはこっそりスマホを取り出し、動画を撮り始める者までいた。

そういえば社内の噂話グル...

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