第348章 事務所

原田大翔は片手でスーツケースを押し、もう片方の手はポケットに突っ込んでいた。「さっき母さんから電話があったんだ。今回は実家に帰るのかって」

「帰らない」

原田大翔は唇をきゅっと結び、原田麻友から視線を逸らして遠くを見た。「原田家がお前の家なんだ。外がいくら良くても、家には敵わない」

原田麻友は僅かに愕然とした表情で原田大翔を見た。

原田大翔は彼女の視線を避け、軽く咳払いをした。「伝言はしたからな。帰れば、父さんも母さんも喜ぶはずだ」

原田麻友はそれ以上何も言わなかった。

ただ俯いて物思いに耽る。

まだ原田家から完全に離れるわけにはいかず、時々は顔を出さなければならない。

しか...

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