第5章 中川家は原田麻友を守ることになった

原田家の他の者たちも、皆一様に奇妙な表情を浮かべた。

原田拓也は中川裕大と年が近く、仲も良かった。彼を引っ張ると、小声で尋ねる。

「お前のお父さん、原田麻友のせいで頭がおかしくなったのか?」

「何が分かるってんだ!」中川裕大は原田拓也を白けた目で見やった。

原田拓也は「……」と黙り込む。

中川誠司はすでに原田弘を回り込み、興奮した面持ちで原田麻友の前に歩み寄っていた。

「麻友さん、どうか私の妻を病院で診てはいただけないでしょうか?」

原田麻友は眉をひそめる。

中川誠司は慌てて続けた。

「来てくださるだけで結構です。結果がどうであれ、貴女は我々中川家の恩人です」

「そうだそうだ、原田麻友。お前が行ってくれるならな。これから江城市で誰かがお前に手を出したら、そいつは俺、中川裕大に喧嘩を売ったことになる。中川家に喧嘩を売ったことになるんだ」

中川裕大は胸を叩いて保証した。

原田家の人々は何が何だか分からず、ただ見ているばかりだ。

原田麻友は相変わらず淡々とした表情で言った。

「私はただの、ごく普通で何の変哲もない配信者なだけです」

中川誠司には意味が分からず、「……」と口ごもる。

しかし中川裕大は察しが良く、即座に理解した。

ポケットからスマホを取り出す。

「俺と親父であんたをフォローする。必要なら、フォロワーを買ってやる」

「必要ありません。私が欲しいのは、心から私の配信を好きでいてくれる視聴者だけです」

「分かった」

中川裕大はすぐにフォローボタンを押し、それを原田麻友の目の前に差し出して、やけにへりくだった態度で言った。

「ご安心ください。これからの配信は、必ず拝見します」

原田麻友はそこでようやく立ち上がった。

「行きましょう」

原田家の人々がまだ何が起こったのか理解できないうちに、原田麻友は中川誠司親子と共に車に乗り込み、去ってしまった。

原田拓也はしばらく呆然としていたが、やがて尋ねた。

「父さん! 中川さんはどういうつもりなんですか?」

原田弘もまた、奇妙に感じていた。

ただ原田日菜だけが、先ほどの中川裕大の言葉を頭の中で反芻していた。

その言葉は、中川家が原田麻友を守るということを、はっきりと示していた。

病院。

車中で、中川誠司親子はすでに中川心春の状況をひと通り説明していた。

中川心春は中川裕大を産んでからというもの、ずっと体調が優れなかった。

特にここ数年は、毎年しばらくの間、病院で過ごすのが常だった。

だが今回はこれまでよりずっと深刻で、一週間前に突然意識を失ったのだという。

病院側の見解では、中川心春の身体は以前と何ら変わりなく、なぜ昏睡状態に陥ったのかは不明とのことだった。

中川誠司たちは、何人もの高名な先生方を呼んで診てもらった。

それらの先生方は、ある者は儀式を行い、ある者は魂呼びをし……ありとあらゆる手を尽くした。

しかし、彼女が目を覚ます気配はなかった。

「あそこですか?」

エレベーターを降りた途端、原田麻友は左手前にある一室を指して尋ねた。

中川心春が入院しているのはプライベートホスピタルで、一つのフロアに病室は十室のみ。すべてがVIP客のためのものだ。

そして、どの病室も外見は全く同じに見える。

中川裕大はこくこくと頷いた。

「そうだ、あそこだ。原田麻友、あんたマジで腕があんのな!」

中川誠司が息子を睨みつける。

しかし内心では、原田麻友を一段と高く評価していた。

一方、原田麻友の目には、清潔で明るい病室の中で、その一室だけが濃い黒い気に覆われているのが見えていた。

病室の扉が開かれる。

原田麻友の表情が、途端に一変した。

病室には死の気配だけでなく、淡い金色の光もある。

ただ、その金色の光は非常に薄く、中川心春の体の周りにごく僅かに漂っているだけだった。

「麻友さん、どうでしょう?」

原田麻友はベッドの傍らに立ち、告げた。

「魂が抜けています」

中川誠司は心臓が跳ねるのを感じた。さらに原田麻友が淡々と続けるのを聞く。

「少し面倒ですね」

面倒?

なぜだ?

魂を呼び戻すのが難しいということか?

彼が口を開こうとしたその時、原田麻友が眉をひそめ、自分を嫌うかのように言った。

「今の私は霊力が足りないので、符を画いて魂を呼び戻すしかありません。ですが、今は呪符の黄紙と辰砂がありません」

中川誠司は、大したことではなかったのかと、ほっと息をついた。

「今すぐ買いに行きます」中川裕大がすぐさま申し出た。「どんな呪符の黄紙と辰砂が要るんですか。他には何か要りますか?」

「普通の呪符の黄紙と辰砂で結構です。それと、お香を一把お願いします」

「分かった」

中川裕大は小走りで買いに出かけた。

中川誠司は恐る恐る原田麻友に尋ねる。

「麻友さん、見込みはありますか?」

「ええ」

その返事を聞き、中川誠司の心は半分ほど安堵した。

「昨日は忠告してくださって、本当に助かりました。私と裕大が来た時、ちょうど研修中の看護師が薬瓶を間違えて、危うく誤投与するところだったのです」

「医師の話では、もしあの薬を打っていたら、叔母さんはもう……」

昨日、息子と全ての事情を把握した後、どれほど肝を冷やしたことか、誰にもわかるまい。

ほんの少しでも遅れていたら、もはや取り返しのつかないことになっていた。

その一点だけでも、原田麻友は中川家の恩人だった。

中川裕大はすぐに品物を買って戻ってきた。

呪符の黄紙が一箱、辰砂が一箱、そして線香が一箱。

原田麻友が確認すると、いずれも上質な品だった。

「始められますか?」

中川裕大は少し興奮しているようだった。

これまでそういった類の話は聞いたことがあるだけで、実際に目にするのは初めてだった。

今の彼は、半信半疑といった段階にいる。

原田麻友は「ええ」と一つ頷くと、呪符の黄紙を一枚取り出し、人差し指と中指を揃え、辰砂に浸して符を画き始めた。

その動きは速く、流れる水のようで、最後の一筆が書き終えられた瞬間、呪符の紙が金色の光を放った。

中川裕大は興奮して中川誠司の腕を掴む。

「父さん、見えましたか? 俺の目の錯覚ですか?」

「静かにしろ!」

中川誠司は息子以上に心の中で興奮していたが、表面上は冷静を装っていた。

原田麻友は画き上げた符を持って中川心春のベッドへと向かい、その胸に呪符の紙を貼り付けた。

さらに香を三本取り、指先で軽く撫でると、香は瞬時に燃え上がった。

中川裕大の目が飛び出るほど驚いた、口は卵が一つ丸ごと入りそうなほど大きく開いている。

――うぉっ、マジかよ、すげぇ!

まるで特撮映画を見ているかのようだ。

一筋の頼りなげな煙が、まるで意志を持っているかのように窓の外へと漂っていく。

原田麻友が小声で何度か呼びかけたが、煙に何の反応もない。

やはり霊力が少なすぎる。

「私が呼んでも応えません。あなた方は彼女の親族ですから、呼べば応えるはずです」

中川誠司は香を手に、途方に暮れて尋ねた。

「どうやって呼べば?」

「彼女の名前を呼び、戻ってくるように言ってください」

「心春、中川心春、早く戻ってこい」

中川誠司が数度呼びかけると、隣の中川裕大も加わった。

「母さん、母さん、早く戻ってきてくれ」

突然、中川裕大の呼び声が止まった。

彼は目を見開き、窓の外を見つめる。遠くへ漂っていった煙が、まるで意志を持ったかのように、ゆっくりと戻ってくるのが見えたのだ。

その煙は、まっすぐにベッドへと向かっていく。

一直線に伸びた煙はベッドの傍らで止まり、やがてふっと消え去った。

「終わりました」

原田麻友が声を上げた。

中川誠司がベッドのそばに駆け寄り、見下ろすと、中川心春の指が微かに動いたのが見え、思わずその手を握りしめた。

中川裕大も目を赤くしながら駆け寄り、「母さん!」と叫んだ。

中川心春はゆっくりと目を開けた。

彼が中川心春を抱きしめようと手を伸ばした途端、中川誠司にぐいと突き飛ばされる。

中川裕大は「……」と絶句した。

向こうで抱き合っている両親を眺め、彼は唇を尖らせると、服についた存在しない埃を払い、気まずそうに原田麻友の隣に歩み寄った。

「あの……母さんはもう、大丈夫なんですよね?」

以前、あれほど原田麻友に意地悪をしていただけに、彼女が突然母の命の恩人となった今、何とも言えない気まずさがあった。

「いいえ、まだです」

「……」

ただの世間話のつもりだったのに。

どうして、こんなとんでもない答えが返ってくるんだ。

前のチャプター
次のチャプター