第85章 恋愛に縁のない人

夜、原田麻友が熟睡していると、突如として不気味な気配を感じ取った。

彼女がはっと目を開くと、窓際に立つ田村玲央の姿が見えた。

窓はわずかに開いており、レースのカーテンが風に揺れ、田村玲央の魂体を通り抜けていく。

彼の本来澄んでいたはずの魂体は、すでにうっすらとした黒い気に覆われていた。

原田麻友が目を覚ましたことに気づいたのか、彼はゆっくりと振り返る。その血のように猩々緋に染まった瞳は、極限まで小さく収縮していた。

原田麻友はベッドから飛び起きると、そのまま田村玲央の前まで駆け寄り、二本の指を彼の額に当て、もう片方の手で呪符の紙をその額に貼り付けた。

一瞬にして、田村玲央の身体に...

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