第255章 毒薬

市場は人通りが多く、ひしめき合う喧騒が鈴木ミクの焦燥感をさらに煽っていた。彼が目立たない商店の前に歩み寄ると、店主の中年男が脂ぎった笑みを浮かべていた。

「店長、農薬を少し買いたいんだが」鈴木ミクは必死に平静を装ったが、その声には微かな焦りが滲んでいた

もともと善人とは程遠く、鈴木瑠璃に対しても日常的に暴力を振るい、罵声を浴びせていた彼だが、計画的な殺人を企てるのはこれが初めてだった。

「何の農薬だ?」店主は顔を上げ、警戒の光を宿した目で彼を一瞥した。「何に使うつもりだ?」

長年農薬を扱ってきた店主には、鈴木ミクが農家でないことなど一目瞭然だった。農家でもない人間が農薬を欲しがる理由...

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