第11章

五年後、東京再建区。

私は相変わらず普通のOLで、きちんとしたオフィススーツに身を包み、疲れ切った体を引きずって家路を歩いていた。

残業後の夕暮れ、通りには人影もまばらになり、遠くのネオンがすでに灯っている。夏の余熱はまだ去らず、空気中には再建後の都市特有の、真新しいセメントとペンキの匂いが漂っていた。

「ふぅ……またこの時間まで残業かあ」

私は凝り固まった肩を揉みほぐす。

「『仕事が辛すぎる』なんて文句を言えた時代が懐かしいな」

とある家の前を通りかかると、玄関先に親子三人が座っていた。父親が子供に五年前の災厄の話をしている。

「あの頃は、変異生物がそこら中にいて、...

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