第10章

その時、静寂を破るように啜り泣く声が響いた。白崎由美子は目に涙を浮かべており、前谷鈴音が優しく彼女を抱きしめている。

「由美子、怖がらないで。私たちはもう安全に着陸したのよ。この温かい食べ物が、私たちが新しく生まれ変わった証拠だわ」

白崎由美子は涙の中に笑みを浮かべ、声を詰まらせながら言った。

「ええ、鈴音姉さん、私たち、ついに……広大な海から陸に上がれたのね」

潮風が湿った香りを乗せてそっと吹き抜ける。俺は白崎由美子を見つめ、目に悪戯っぽい光を浮かべた。

「由美子、涙じゃ腹は膨れないぜ。涙を力に変えて、貝をもういくつか食ったらどうだ。ぐずぐずしてると、この美味いもんは全部俺...

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