第12章

俺は頷き、巨岩の南側を指差した。

「あそこに谷がある。水場が見つかるかもしれねえぞ」

俺の言葉には、一抹の自信が滲んでいた。

本田安奈に視線を移し、尋ねる。

「腹の調子はどうだ? もう歩けるか?」

本田安奈はこくりと頷いた。

「もうずっと良くなりました。歩くのに支障はありません!」

俺は頷き、荷物をまとめると、本田安奈を連れて巨岩に沿って南へと歩き出した。

一時間にわたる跋渉の末、俺たちはついにその谷の入り口にたどり着いた。

空気がひどく湿り気を帯び、清々しい気配が鼻をくすぐる。

俺たちは歩を速め、背の低いエンジュの林を抜けると、せせらぎの音がする小川が目...

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