第258章

言い終わるか否か、彼女は背負い籠の肩紐を握りしめたまま、ものすごい勢いで駆け寄ってきた。そして、勢い余って俺の胸に飛び込んでくる。

 次の瞬間、彼女は俺を体ごと受け止めるように、ぎゅうっと力強く抱きしめた。まるで、俺を自分の体の一部にしようとしているかのように。

「おじさん、よかったぁ! 海で遭難したって聞いて、もう本当に心配したんだから……っ。本当によかった、無事に帰ってきてくれて」

 白崎由美子の声は震え、感極まって涙声になっていた。

 俺は気恥ずかしさを感じながら、苦笑して本田安奈に視線を向けた。

 本田安奈は涼しい顔で微笑んでいるだけで、不機嫌な様子は見せない。

 だが、...

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