第265章

ヒグマの背後へ回り込むと、足元の窪みに野生の鹿の死骸が転がっていた。

まるで鋭利な刃物で一刀両断されたかのように、断面は異常なほど滑らかだ。大型の切断機でも使わなければ、こうはいかないだろう。

ふとヒグマの爪を見ると、べっとりと鮮血が付着している。

(まさか、あの鹿……こいつが爪で切り裂いたのか?)

昨日の記憶が蘇る。樹に激突して死んだ軽率なウサギ。夜闇に紛れて猿人を襲った女王蜂。

だが、目の前のヒグマは違う。体格、毛並み、そして狩猟本能。何より猿人を前にしても動じないその冷静さ。

(こいつ、間違いなく変異してやがる)

おそらく変異してから相当な時間が経過しており、自身の変化に...

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