第350章

厳しい顔つきの老人が視界に現れ、畑の端に座り込んでいる子供に向かって声を張り上げた。

「海老原和生、水やりの手伝いをしなさい。サボるんじゃないぞ」

俺はハッと我に返った。気がつけば、あの老いた猿と共に、この畑の中に置かれたソファに腰を下ろしている。目の前の光景はあまりにもリアルで、土の匂いさえ鼻をくすぐるほどだ。

胸の奥から、名状しがたい感情が込み上げてくる。それは久しく忘れていた肉親の情愛であり、幼き日の記憶だった。

「お祖父さん」

子供が答えた。あれは幼い頃の俺だ。

「この空模様じゃ、もうすぐ雨が降るよ。今水やりしたって無駄になっちゃうじゃないか」

「今日は降らんよ」

老...

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