第58章

三船亜由美たちが燃料を集めてきて陶器の壺の下に詰め込み、前谷鈴音が火を起こした。

炎の熱が陶器の壺を伝わって海水に届き、まもなく土鍋の中の海水が沸騰し始めた。

水蒸気は水管へと流れ込み、そこで凝結して小さな水滴となり、滑り落ちてバケツの中へと溜まっていく。

大平愛子は興奮して叫んだ。「できたわ! できた!」

みんなが周りに集まってくる。管から滑り落ちてくる水滴はゆっくりだが、塵も積もれば山となる。半日もあればこの桶一杯になるだろう。これは命懸けで海辺へ水を汲みに行くよりもずっと効率がいい。

一滴、また一滴と落ちる水滴を眺めながら、皆は大平愛子に尊敬の眼差しを向けた。

大平愛子は一...

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