第8章
三ヶ月後。私は玄関の戸口に立ち、コーヒーマグを片手に、すっかり様変わりしたリビングを見渡していた。
飾り棚の上にあった渡辺涼介のゴルフのトロフィーや会社の表彰盾は消え、代わりにモノクロームの写真が何枚も飾られている。川辺公園で笑い合う美咲と私。朝市で肩を寄せ合う母と娘。新しいシーズンで、美咲が初ゴールを決めた、その歓喜の瞬間。
壁は、涼介が好んだ無機質なベージュから、温かみのあるテラコッタ色に塗り替えられていた。
ヴィンテージのペルシャ絨毯も、窓辺に置かれたふかふかの読書用チェアも、私の本当の興味を反映した本のコレクションも、すべてが、私自身の選択だった。
大理石のカウンタ...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章


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