第2章

絵里視点

五年前の夏。

私は十八歳で、何もかもが映画の始まりみたいに感じられた。お父さんが沙織さんと再婚して、突然、私にまったく新しい家族ができたのだ。私のことを本当に好いてくれているみたいな継母と、それから……私が絶対に読まない、大学が舞台の恋愛小説からそのまま抜け出してきたみたいな義理の兄。

『はい、嘘です。思いっきり読んでました』

初めて悟に会ったとき、彼は新しい家のリビングで、大きな窓から差し込む陽の光を浴びながら、分厚い教科書を読んでいた。私が入っていくと、彼が顔を上げた。その瞬間、本当に、私の頭は……思考を停止した。

『やばい……』

黒髪に、シャープな顎のライン。そして、ワイヤーフレームの眼鏡の奥にある、信じられないくらい真剣な黒い瞳。シンプルなグレーのTシャツを着ているだけなのに、なぜか肩幅がすごく格好良く見えた。私を見上げたとき、彼の眉間には、ものすごく集中していたんだろうなってわかる、小さなしわが寄っていた。

『これが、知的な人ってことなんだ』、私は完全に呆然としながらそう思った。『私も、こんな風に知的に見られたい』

昔から頭のいいタイプに惹かれるたちだったけど、悟は、まるで私の理想の男性チェックリストを誰かがそのまま現実に連れてきたみたいだった。メガネ?クリア。趣味でちゃんとした本を読んでそう?クリア。物静かで知的な雰囲気?文句なしのダブルクリア。

『で、その人がこれから義兄になる、と。完璧。ええ、とっても完璧』

「こんにちは」私は、あまりにもテンション高くそう言ったのを覚えている。「私、絵里です!これから妹になれて、すっごく嬉しいです!」

『妹。ああもう、その言葉を口にするだけでも、変な感じがした』

彼は一瞬、私を見つめた。その表情に、私には読み取れない何かが浮かんだのを、確かに見た。それから、彼は微笑んだ。丁寧だけど、どこか壁のある笑顔だった。

「こんにちは、絵里」

『まったく、あの頃の私って、なんてわかりやすかったんだろう』

今、記憶が洪水のように押し寄せてくる。考えることすら辛くて、心の奥底に埋め込んでいたはずの無数の瞬間が。たとえば、最初のひと月を丸々費やし、悟の好きなものを必死で探り当てようとしていたこと。そうやって……一体、どうしたかったのだろう?新しいお兄ちゃんに、良い印象を与えたかったのか?それとも、ただ純粋に仲良くなりたかっただけなのか?

『あるいは、もしかしたら……もうあの時から、抱いちゃいけない感情を育て始めていたのかもしれない』

彼がコーヒーを淹れているときは、キッチンの周りをうろついて、その習慣を覚えようとした。コーヒーはブラックで飲むこと、トーストはいつもバターだけで、ジャムはつけないことを知った。だから当然のように、私は早起きして彼の朝食を作るようになった。

「悟、トースト焼いたよ!」私は得意げにそう宣言した。

彼はいつもお礼を言ってくれて、必ず一枚は食べてくれた。でも、そうするとすぐにバックパックを掴んで、研究室か、図書館か……とにかく、やたらと張り切っている新しい義妹と時間を過ごすのを避けるためのどこかへ、姿を消してしまうのだった。

『ただ私の料理が口に合わないだけだと思ってた』

それから、彼が大学で生化学を専攻していると知った時のこともあった。彼の研究について知的な質問ができるように、週末を丸ごと使って、ウィキペディアで分子構造に関する記事を読みふけったのだ。

「それで、研究ではどういうことを専門に?」夕食の席で、私はそう尋ねた。四十八時間ぶっ通しで化学の知識を詰め込んできたなんて、おくびにも出さないように、さりげないふりをして。

「神経伝達物質の経路だよ」彼はそう答えて、またあの丁寧な笑顔を見せた。

「すごい!えっと……ドーパミンとか、そういうのですか?」

その時の彼の笑顔は、少しだけ本物になった気がした。「うん。セロトニンとかノルエピネフリンとか、他にもいくつか。実は、かなり面白いんだ」

言っていることの半分もろくに理解できていなかったのに、私は熱心に頷いた。「今度、もっと詳しく教えてください!」

「そうだね」と彼は言った。でも、その『今度』が来ることは、決してなかった。

最初の年は、たくさんのことを提案した。映画とか、ハイキングとか、街に新しくできたカフェに行くとか。悟にはいつも、行けない理由があった。

「ラボの用事があるんだ」

「指導教官との面談が」

「溜まってる文献を読まないと」

しばらくして、私は誘うのをやめた。彼が私と出かけることに興味がないのは明らかだったし、空気が読めない、うっとうしい義妹にはなりたくなかったから。

でも、それでも私は、積極的に彼に近づき続けた。自分では驚くほどうまくやっていると思っていたし、悟の友人たちでさえ、私のことを素晴らしい妹だと褒めてくれた。あの日、あの言葉を聞くまでは。そして、私は二度と彼に同じようには近づけなくなった。

三年前のこと。悟が友人たちを何人か家に招いて、フットボールの試合を観戦することになった。私はすごく興奮していた。もしかしたら、ついに、彼の世界の一部になれるかもしれない、と。

だけど、私が階下に降りていくと、悟は私を一瞥してこう言った。「絵里、勉強することあるんじゃないの?」

意地悪というわけではなかった。でも、その意図は明らかだった。『あなたはここにいるべきじゃない』。

だから私は二階に上がった。でも、自分の部屋には行かなかった。代わりに、彼らの話し声が聞こえる階段に座り込んだ。大学生の男の子たちがどんな話をするのか、ただ興味があっただけだと自分に言い聞かせた。悟が私のことを何か良く言ってくれるのを期待していたわけでは、決してない。

「おい、お前の妹、可愛いじゃん」友人の一人が言った。「仲良さそうだな」

その言葉に、私はぴくりと耳を立てた。『仲良さそう?私たち、そう見えるの?』

「いつもいるよな」別の友人が付け加えた。「お前の後をついて回って」

恥ずかしさで頬が熱くなった。『私、そんなにわかりやすかった?』

その時、悟が口を開いた。彼の言葉は、まるで酸でできているかのように、私の記憶に深く刻み込まれた。

「絵里のこと、妹だなんて思ってない」

その後も会話は続いていたが、私の耳にはもう何も届かなかった。まるで平手打ちを食らったかのように耳鳴りが響き、胸の奥にはひどい空虚感が広がっていく。何ヶ月もの間、彼の世界の一員になりたくて、家族として認めてもらいたくて、必死に努力してきたというのに……彼は私を「妹」と呼ぶ価値があると、せめて見せかけることすらできなかったのだ。

『当然だよね』。その考えは、苦くて屈辱的な味がした。『あんたはただ、彼の家に転がり込んできた、どこの馬の骨とも知れない女なんだから。彼がどうしてあんたを身内だと認めてくれるの?』

震えが止まるようにと願いながら、私は背中を階段の手すりに押し付けた。彼のために作った、バカみたいな朝食の一つ一つ。生化学について、念入りに下調べして仕掛けた会話の数々。彼が部屋に入ってくるたびに向けた、期待に満ちた笑顔。そのすべてが、今となってはあまりにも惨めに感じられた。

私はそっと自分の部屋に戻り、泣きながら眠りについた。

あの夜から、すべてが変わった。悟と繋がろうと必死になるのをやめた。朝食を作ったり、彼の研究について尋ねたり、家族でのイベントを提案したりするのもやめた。彼が私を妹として望まないなら、それでいい。私も、丁寧でよそよそしくなることはできる。

そして、どうなったと思う?彼はそれを受け入れたようだった。私たちは、礼儀正しい共存という、慎重なルーティンを築き上げた。家族での夕食での当たり障りのない世間話。廊下ですれ違う時の丁寧な挨拶。それ以上のことは、何もない。

私はそれでいいのだと自分に言い聞かせた。自分がどこに立っているのかを知る方が、恥をかき続けるよりずっとましでしょう?

『でも今、私は考えている……もし、私が完全に勘違いしていたとしたら?』

今、私は再びスマホを手に取り、最近のメッセージをスクロールし始めた。

『また傘なしで雨に降られちゃった😭』

『そこにいろ。迎えに行く』

私は大学の図書館の外から彼にテキストメッセージを送った。すると彼は、二十分もかけて車で迎えに来てくれたのだ。私はただ、親切にしてくれているだけだと思っていた。兄としての義務みたいなものを果たしているだけだと。

『夕飯は食べたのか?』

『コーヒーも夕飯にカウントされるよね?』

『ちゃんとしたものを食べろ。何か注文しておく』

四十分後、出前サービスが、私のお気に入りの店のタイ料理を届けてくれた。私が好きだと口にしたのは、半年前、たった一度だけだったのに。

『うそ……』

突然、私の人生の三年間が、まったく違う角度から見えてきた。悟がよそよそしくて、興味がなさそうに見えたあの時々のすべて……もし彼が冷たかったんじゃなかったとしたら?もし彼が、慎重になっていたのだとしたら?

その考えは、あまりにも大きくて、恐ろしくて、そして素晴らしくて、息もできないほどだった。

私は机から一冊のノートを掴み取り、ペンを走らせ始めた。この謎を解き明かすつもりならば、周到な計画が不可欠だ。そして、彼の口から飛び出した数々の愚かで誤解を招く発言を鑑み、私はこの計画を『オタク計画』と名付けることに決した!

前のチャプター
次のチャプター