第5章

悟視点

絵里が帰った後のアパートは、不自然なほど静かだった。俺はソファにどさりと身を沈める。熱で頭はまだ霞んでいるが、胸の痛みは病気のせいじゃない。

『一体、何が起こったんだ?』

髪を手でかき上げ、ここ数分の出来事を整理しようと試みる。さっきまで絵里は俺の膝の上にいて、胸に手を置き、まるで彼女も何かを感じているかのような瞳で俺を見ていた。次の瞬間には、火傷でもしたかのように俺から逃げ出していた。

もう一度、体温を測る。三十七度六分。まだ高いものの、さっきよりはずっとましだった。頭ははっきりとしてきたが、そのせいで混乱は深まるばかりだ。熱に浮かされているときは、すべてが単純に思え...

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