第28章

安田歌子がひと足先に塀へ飛び乗った。あまりに突然のことだったせいで、少年はぎょっとして、そのまま塀の上から地面へ転げ落ちる。

古崎拓人も、ひったくりに遭った老人を支えながら駆けつけてきた。

老人は慌てて地面に落ちた財布を拾い上げ、付いた土をぱっぱっと払うと、感謝のこもった目で安田歌子を見た。

「ありがとう、お嬢ちゃん。この財布はわしにとって大事なものでね。助けてくれて本当に助かったよ」

安田歌子は軽やかに塀から飛び降り、地面に倒れた少年を見下ろす。

「若いのに真面目に生きようともせず、ひったくりなんてするの?」

少年はむくりと起き上がり、憎悪をむき出しにして安田歌子をにらみつけた...

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