第31章

受話器の向こうから、沈村の母の声が流れてくる。作りものめいた、やけに柔らかな声。

「歌子、お母さんね、最近ちょっと体の具合がよくなくて……一度、帰ってきてお母さんの顔を見てくれない?」

安田歌子は冷えきった表情のまま、口元だけを薄く引いた。またか。番組を降りろと説得しに来た人間が、また一人増えただけ。

さっきの脅しは効かなかったらしい。斉藤監督が向こうの要求を突っぱねたのだろう。

そうでなければ、木原涼香みたいな傲慢な女が、こちらに頭を下げるような真似をするはずがない。

「具合が悪いなら病院に行けば? 私に関係ある?」

沈村の母は、その言葉に喉を詰まらせたように顔色を曇らせる。そ...

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