第32章

沈村景は、完全に動揺していた。

安田歌子は、どれだけ否定しようと自分の実の妹だ。情がないはずがない。

それに――見つかって、戻ってきてくれたこと自体が、素直にうれしかった。

この一年、関係だって悪くなかった。五人いる兄の中でも、歌子がいちばん自分に近かった。

沈村景が何か頼んでも、歌子は一度だって拒まなかった。

なのに、どうして急に、こんなことになってしまったのか。

自分は実の兄なのに。「もういらない」で切り捨てられるのか。

その落差が大きすぎて、沈村景は受け止めきれない。

これまでは、歌子が意地を張っているだけだと信じていた。いつか元に戻る、と。

けれど今は――沈村景自身...

ログインして続きを読む