第243章 それなら、やめておこう

 そう口にした時、山田真里の眩暈(めまい)は明らかに治まっていた。

 彼女がもたらしたその手掛かりは、その場にいた者たちに少なからぬ驚きを与えた。室内にいた数名の男たちが歩み寄り、北村辰の執務室にあるソファを慌ただしく移動させる。

 いわゆる業務提携の意向書が、ソファの下に無造作に転がっているのを目にした瞬間、全員が口を閉ざした。

「なんで北村社長のソファの下なんかに、意向書があるんだ?」

「全くだ。佐藤さんが持ち去ったんじゃなかったのか? どうしてこんなところに」

「何か裏があるんじゃないか?」

 室内の人々がざわめき始める。これまで山田真里の肩を持っていた中村美緒でさえ、意味...

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