第326章 冗談が通じない?

 奴は、金を要求している。

 青山部長の執務室に入ってからというもの、佐藤愛はずっと黙っていた。だが、相手の意図を察するやいなや、彼女は川原裕子を部屋の隅へと引っ張っていった。

 愛は声を潜めて裕子に耳打ちする。

「裕子、この男、賄賂をよこせって言ってるのよ」

 愛の言葉を聞き、裕子は憤慨した。

「ええっ? うちはまだ小さな会社で、立ち上げたばかりじゃない。そんなお金、どこにあるっていうの?」

「それに、私たちは実力で勝負してるのよ。品質に文句があるなら証明書を出せばいいわ。こんなのあんまりだわ」

 川原裕子は根が正直だ。現役の大学生である彼女にとって、ビジネスとは公明正大であ...

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