第339章 ただ会いたかった

 その男の姿を視界に捉えた瞬間、佐藤愛の本能が警鐘を鳴らした。

 彼女は反射的に携帯電話をハンドバッグの奥へと滑り込ませる。

 そして、いつ襲われても対処できるよう、掌の中にぐっと拳を握り込んだ。

 ――やはり、私の勘は当たっていた。

 誰かが尾行している。

 私の予想が正しければ、この執拗な視線の主は、海岸線での密航ビジネスに関わっている連中だ。

 昨晩、たまたまあの場所を通りがかっただけだというのに、もう身元を特定してくるとは。敵ながらあっぱれと言うべきか、なかなかの手腕だ。

 サングラスを掛けたその男が、じりじりと距離を詰めてくる。

 佐藤愛が迎撃の体勢をとろうと身構え...

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