第393章 キスして

「怖気づいたか?」

 北村辰は小首を傾げ、真剣な眼差しで佐藤愛を見つめた。

 佐藤愛は言葉を失い、戸惑いを隠せない。

 北村辰は彼女の手を引き寄せ、自身の手の中に包み込むと、問い詰めるような口調で言った。

「ドアを蹴破って、鬼のような形相で浮気現場にカチ込みかけた時は、微塵も怖がっていなかっただろう?」

「それは……」

 佐藤愛は二の句が継げない。

 北村辰は佐藤愛の手をさらに強く握り締め、畳みかける。

「それは、何だ? 正直に言え。俺を尾行したな?」

 その言葉を聞いた瞬間、佐藤愛は慌てて否定した。

「タツ兄、誓うよ! 尾行なんてしてない、本当にしてないってば」

「夏...

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