第70章 誘われた

あり得ない! 絶対にあり得ない。

たとえ佐藤愛が自分に気があるとしても、それに応えるわけにはいかない。そもそも、佐藤愛が北村家に来た時、自分は彼女とは絶対に結婚しないと心に誓ったはずだ。それに、佐藤愛の容姿は自分と並んで歩くには釣り合わない。彼女の顔にあるあのホクロだけは、どうしても乗り越えられない美的感覚の壁だった。

北村星はぶんぶんと首を振り、さらに手のひらでこめかみを数回叩いて、無理やり意識をはっきりさせようとした。

北村星が画展を去ってからというもの、鈴木ククの目はまるで釘付けにされたかのように、彼が去った方向をじっと見つめ続けていた。

その様子は……。

佐藤愛はほとほと呆...

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