第72章 絵、守れなかった

鈴木ククのこととなると、佐藤愛は黙って見ていられなかった。

山口兄の手が、まさに鈴木ククの顔に触れようとしたその瞬間、佐藤愛が動いた。

彼女は手を伸ばして山口兄の腕を遮ると、言った。「山口兄、女が大事? それとも、数億の価値がある名画が大事?」

「それより、まずは腰を落ち着けて、絵の話でもしない?」

佐藤愛の言葉は、見事に山口兄の注意を引いた。彼は視線を佐藤愛の顔に向ける。だが、その顔にある大きなホクロを目にした途端、全ての考えを打ち消した。

「絵の話だと? お前に決定権があるのか?」山口兄は実に訝しげに佐藤愛を見た。

「醜い女め、この山口兄をからかったらどうなるか、分かってんだ...

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