第87章 会いに行く

やはり、男は皆スケベだ。

こういう春めいた光景を目にすれば、足を止めない男など一人もいない。

自分の胸で北村辰の気を引くことさえできれば、この高嶺の花のような男を自分の虜にしてみせる自信があった。

「葉田静香……」

「北村社長、何かご用でしょうか?」

北村辰を前にして、葉田静香は従順な様子を装った。

男は自分たちの前でか弱い女を好む。そうすることで、彼らの庇護欲を大いに掻き立てることができるからだ。

「葉田静香、北村グループはまっとうな会社だ。我々は業績と能力で南町市に根を下ろしている。南町市の顔とも言える北村グループの社員が、そんな格好で出勤して、君はそれが適切だと思...

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