第90章 自ら苦しみを求める

北村辰が何の反応も示さず、自分を受け入れたようだと見た葉田静香は、さらに図に乗った。

彼女はぶりっ子をして、聞いているこちらがぞっとするような声を出した。

「北村社長、私、寒いです……。あなたの服、貸していただけませんか……」

葉田静香のその甘ったるい声を聞いた北村辰は、はっと我に返り、自分に寄りかかっていた彼女を力いっぱい突き飛ばした。

葉田静香はよろめき、もう少しで地面に倒れるところだった。

突き飛ばしても北村辰の気は収まらず、彼は葉田静香に向かって言い放った。「何を考えているんだ? 俺の服をお前に貸したら、俺が何を着るんだ?」

北村辰のその言葉に、葉田静香はあっけ...

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