146.そこまでしなくてもいい

給湯室のすぐ脇が、階段の踊り場になっている。

いつからそこにいたのか、白崎誠也と岩本旭が並んで立ち、こちらを見下ろしていた。

石原七緒の言葉が耳に入った、その瞬間。

白崎誠也は、まるで時間が止まったみたいに固まった。整った顔に、信じられないという色がじわじわ浮かび、手から力が抜ける。持っていた紙コップが床に落ち、コトンと乾いた音を立ててから、七緒の足元のほうへコロコロと二回転した。

岩本旭も言葉を失ったまま二人を見つめ、反射的に白崎誠也の表情を窺う。

石原七緒は全身がこわばった。血が凍ったみたいで、白崎誠也の顔を見るのが怖い。

どれほどの時間が過ぎたのか。

ようやく七緒が動き、...

ログインして続きを読む