070.それは私のピアノです

一方そのころ、講堂の控室は、妙に静かで、どこか気味の悪い空気に包まれていた。

石原絵梨花があの一言を言い終えた瞬間、周囲の連中は揃って首を傾げる。

木村爺さんって、誰だ?

それに――石原絵梨花と石原七緒の仲が悪い、なんて程度の話じゃないように聞こえる。

石原七緒は一瞬きょとんとし、探るような目で絵梨花を見た。けれど口元には笑みを貼りつけたまま、やわらかな声で言う。

「姉ちゃん、怒りすぎて頭が回ってないんじゃない? そんなことしなくていいよ。あのピアノは確かにパパとママが私に買ってくれたものだけど、私たち姉妹でしょ? いちいち姉ちゃんと同じ土俵で争ったりしないよ」

言い終えるや否や...

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