第6章
「姉」だと名乗る目の前の女性を、私は驚愕の眼差しで見つめていた。彼女が口にした言葉を、どうしても咀嚼できない。
中村家? あの中村グループの令嬢? まるでテレビドラマのような展開だ。あまりにも現実離れしていて、信じろという方が無理な話だった。
「急にこんなことを言われても、信じられないのは無理もないわ」
中村紗織は静かにそう告げると、ベッド脇の椅子に優雅に腰を下ろした。
「でも、DNA鑑定の結果が出ているの」
手渡されたコップを受け取る。冷たい感触が、少しだけ意識を覚醒させてくれた。
けれど、涙は止めどなく溢れてくる。
二十年以上もの間、私は自分を誰にも気に留められ...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
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