第4章

真希視点

「今……千尋のこと、愛したことないって言ったの?」

私の声が、ギャラリーの壁に跳ね返る。

周囲の鏡には、私たちの姿が欠けることなく映っている――ひび割れ一つない完璧なイメージを形作る、正しい場所に立った二人の人間。

潤が私の方を向く。鏡の中の私じゃない。本物の、私を。

その像は、一瞬にして砕け散った。

「愛してると思ってた」彼の声は静かだ。「大学の頃、私たちは完璧なカップルだって誰もが言ってた。彼女はアートの化身みたいだった――美しくて、才能があって。私たちを見て、みんな『あれこそ理想のカップルだ』って言ってたんだ」

彼は一歩近づく。

「でも真希、彼女と一...

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