第161章

「――あたしのこと、馬鹿だと思ってるのはそっちでしょ。金を振り込んだあと、本当に人を返すって、どうやって確信しろっていうの? そのまま口封じに手を下すかもしれない」

吉崎直子は椅子の背にもたれ、落ち着き払った口調で続ける。

「それに、母の安全を盾にして二度目の金を要求してきたら? どうするの」

直子の言葉に、電話の向こうは露骨に苛立った。声が一段高くなる。

「選択肢はねえ!」

「主導権はこっちだ。お前の母親の命も、こっちが握ってる!」

「お前が――」

「だからこそ、顔も出せない誘拐犯なんて信用できない」

直子は鼻で笑い、ゆっくりと言い切った。

「……だから、対面で取引する」...

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