第162章

彼女は奥歯を噛みしめ、床に落ちた金属の置物を拾い上げる。もう一度、叩きつけるつもりだった。

だが次の瞬間、目の前の床がぐるりと回った。

それだけじゃない。手の中のそれが、まるで鉛でも詰まっているみたいに重い。

吉崎直子はよろけ、反射的に頭を振って意識を保とうとした。

けれど強烈な薬が、呼吸と一緒に体の隅々まで回っていく。四肢が言うことをきかない。

視界がじわじわと闇に塗り潰される。完全に落ちる直前、もう一度ドアが開き、ぼんやりとした人影が何人か入ってくるのが見えた気がした。

誰なのか確かめる前に――意識は、ぷつりと途切れた。

どれほど経ったのか。

ようやく意識が浮上した瞬間、...

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