第167章

羽島浩介は一瞥すらくれず、相手の手首を掴むと、そのまま力任せに捻り上げた。

「ぎゃあああっ!」

悲鳴と同時に、腕はあり得ない角度で弧を描く。――骨が、無理やり折られたのだ。

羽島は、顔を歪めて膝から崩れ落ちる男を淡々と見下ろし、細く目を眇める。次いで鉄パイプを奪い取ると、躊躇なく振り抜いた。

『ふんっ!』

鈍い衝撃音。激痛が走った瞬間、屠夫の顔色が変わり、腹ばいのまま床に叩きつけられた。

羽島浩介は、倒れた男に二度と視線を向けない。まっすぐに吉崎直子のほうへ歩いていく。

近づいてくる男を見て、直子の身体から、張り詰めていたものが少しずつほどけていった。

――こんなに早く、羽島...

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