第51章

会場中の視線が、二人に集まる。

このキーボードの行方が、いったい誰の手に落ちるのか――誰にも分からなかった。

吉崎直子が口を開こうとした、その瞬間。

スーツ姿のスタッフが早足で駆け寄ってきた。

「吉崎さん」

スタッフは箱を抱えたまま、一直線に吉崎直子の前へ。

無数の視線を浴びながら、両手で恭しく差し出す。

さきほど壇上で競りにかけられていた、あのキーボードだ。

「吉崎さん、こちらはお客様のものです。規定により、紫灯のお客様は本オークションにおいて優先取得権をお持ちです。出品物はいつでもお引き取りいただけますし、お支払いも不要でございます」

その一言で、会場の空気が凍りついた...

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