第59章

吉崎広峰は家に戻るなり上機嫌で、鈴村紀子を呼びつけた。

「早く! 使用人にうまいもん作らせろ! 俺たち、これから成り上がるぞ!」

鈴村紀子はあくびをしながら寝室から出てきたが、顔を見た瞬間、腹の底に溜まっていた不満がむくむくと膨れ上がった。

ここ最近、会社の業績は冴えない。そんな状況では彼女も気軽に金を使えず、娘が林原家の『認親宴』に出る準備に全額つぎ込んだせいで、自分に回ってくるのは月に十数万円程度の生活費だけ。

仲のいい奥さまたちに誘われても、出費が怖くて外に出られない。

だからこそ、広峰が嬉しそうにしているのを見るだけで、苛立ちが先に立つ。

「商売がこんなに苦しいのに、打開...

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