第86章

「この……クズが!」

羽島浩介は、ついに腹の底の怒りを抑えきれなかった。

次の瞬間、容赦のない回し蹴りが男の胸へ叩き込まれる。

男の身体は一瞬で吹き飛び、洗面所の壁へ激しく叩きつけられた。

鈍い呻き声。ずるりと床へ崩れ落ちた男の顔は真っ青で、口元からは血がにじんでいる。

だが、それでも羽島浩介の怒りは収まらない。

彼は無言のまま歩み寄ると、腰をかがめ、男の襟首を乱暴につかんで床から引きずり起こした。さらにもう片方の手を高く振り上げる。

「浩介!」

吉崎直子の顔色が変わる。

彼女はすぐさま一歩踏み込み、羽島浩介の手首を強くつかんだ。

「ここで手を出しちゃ駄目よ。こんな人間の...

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