第90章

最後のひと言は、重たい鉄槌みたいに吉崎直子の胸を叩きつけた。彼女ははっと顔を上げ、鋭い眼差しを突き刺す。

『あんた……いったい何者?! どうしてそこまで知ってるの?!』

『言っただろう。それは重要じゃない』

男は口元をつり上げ、手にしたグラスをゆらりと傾ける。波紋がほどけていく酒面を見つめたまま、低く告げた。

『君は――俺が味方だと知っていれば、それで充分だ』

『よく言うだろ。敵の敵は、味方……そういうことさ』

その言葉に、吉崎直子は目を細め、相手を射抜くように見据えた。

なぜだろう。妙に――見覚えがある。けれど、どこで会ったのか思い出せない。

しばらく観察してから、彼女はぽ...

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