第16章 まさか私のこと好きになったの

ドアが開いた。

マイバッハから姿を現した真田修一は、排水溝の溝を長い脚で跨ぐと、まっすぐこちらへ歩いてくる。

今日は黒のタートルネックに、上着はなし。視線が流れる。寺内安、相澤永知――そして最後に、日向茜へと釘づけになった。

その眼差しは複雑だ。怒り。それは疑いようがない。だが怒りの底には、別の何かが重く沈んでいる。

日向茜は反射的に、帆布のトートを背中側へずらした。

中に入っているのは抗がん剤ばかりだ。アパチニブ塩酸塩、オメプラゾール、デキサメタゾン……どれか一箱でも取り出せば、適応症の欄に「悪性腫瘍」と刷られている。

見せられない。

真田修一は彼女のすぐ手前、腕一本ほどの距...

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