第19章 あの女は林田知代の顔をしている

日向茜は大理石のカウンターに手をつき、無理やり背筋を伸ばしたまま、ひとり考え込む。

こんな終わりのない揉め事に付き合っている暇はない。

真田修一と、離婚の件を今日こそ決着させる。あの離婚届さえ手に入れば、真田家の監視から名実ともに抜け出せる。そうして、調べるべきことを調べられる。

日向茜は主寝室を出て、廊下の突き当たりにある書斎へ向かった。

書斎の扉は、半開きだった。

都合よく――真田修一が広いデスクの向こうに座っている。手には書類。表紙に太字で印字された文字が目に入った。

離婚協議書。

彼の視線は、末尾の署名欄に釘づけになっている。眉間には、ほどけない結び目みたいな皺。

日...

ログインして続きを読む