第5章 知る資格はない

日向茜の耳の奥で、ぶうんと耳鳴りがした。

世界の音はすべて消えた。

残ったのは、真田修一のあの一言だけ。

「どうして?」

その言葉が脳の奥へねじ込み、かろうじて繋ぎ止めていた理性をぐちゃぐちゃに掻き回す。

「私と、お母さんが……いったい何をしたの?」

わからない。

どうしても、わからなかった。

2年前、真田修一は彼女にプロポーズした。

あのとき、母はちょうど重い心臓病と診断され、まとまった金がどうしても必要だった。

――俺と結婚しろ。全部、俺が引き受ける。

あれは絶望の底に差し込んだ救いなのだと、茜は信じた。

けれど本当は違った。

あれは彼女のために周到に仕組まれた...

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