第54章 彼を苦しめられさえすれば

「日向茜、落ち着け!」

寺内安は弾かれたように飛びかかり、まだ震えている日向茜の肩を両手で押さえ込んだ。

「真田修一みたいなクズのために命まで賭けて、手を汚すなんて……そんなの、割に合わない!」

日向茜は揺さぶられるまま、視線だけをローテーブルの上のコピー用紙に縫い付けていた。

脳内で何度も反芻される。――真田修一が殺し屋を雇った、動かぬ証拠。

「安ちゃん」

日向茜は散らばった書類と写真を一枚残らず集め、きちんと揃える。

それから、ゆっくり口を開いた。

「私、もう長くないの」

「死ぬ前に……道連れを作らなきゃ、気が済まない」

寺内安の全身が、ぴくりと硬直した。

肩を掴ん...

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