第66章 兄貴に惚れたんじゃないだろうな

日向茜の懇願を前にしても、佐伯樹の目は静かだった。静かすぎて、どこか冷たい。

「匿えって?」彼は言葉をなぞるように繰り返す。「ここを何だと思ってる」

日向茜は服の裾をきゅっと握り、小さく言った。

「わ、私は……太郎の身が心配で、自分からヘリに乗りました。だ、だから……今さら戻ったら、あの人は私を許しません」

「それはお前の事情だ」

佐伯樹の声は淡々としていて、ひどく理性的だった。

「島に置いておくほうが、俺にとっては厄介だ。お前は真田修一の元妻だろ。そんな人間をここに抱えたら、俺があいつに喧嘩を売ってるのと同じだ」

一拍。

「お前の頼みのために、いかれ野郎を敵に回す気はない」...

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