第159章:名前

乳母部屋に火が入らなくなってから、もう長い年月が経っていた。サヴォンヌが幼いころ、手狭になってもっと大きな部屋が必要になって以来のことだ。以来ずっと、ジュールもヴィスカも、そこを片づける気にはなれなかった。

いま、その部屋には山羊の乳と煙の匂いが混じっていた。

ヴィスカは戸口に立ち、鉄の格子の向こうで炎がゆらめくのを見つめた。背の高い窓から朝の光が差し込み、絨毯に、彫刻の施された揺り籠に、炉端に寄せられた清潔な衣類に、そっと横たわった。外では、庭に張り出す葉の落ちた枝を風が渡っていく。

ジュールは火のそばに座り、赤子を肩に抱き寄せていた。髪はきちんと留めてあるのに、ほつれた毛束が疲れた顔...

ログインして続きを読む