第9章うそをつく小さな救い主

――ダックス――

「まだそこにいるんでしょう!?」彼は、自分の手を見つめる彼女のささやきを聞いた。部屋の中を動き回る彼女を目で追うのは難しかった。真正面に入ってこないかぎり、人の姿は視界の端でしか捉えられないのだ。

彼女はまた永遠にも思えるほど長く彼の手を見つめ、それから立ち上がって身をかがめ、彼に顔を寄せた。ぶかぶかのドレス越しに、身を乗り出した拍子にのぞく胸元がほんのわずかに見えた。

彼女が初めて自分の部屋に入ってきたときのことを、彼は思い出した。あの臆病そうなちびが、自分は彼の妻だなどとよくも言えたものだ。見覚えのある顔だった。以前どこかで見たはずだとわかっていたが、今のように傷だ...

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