第163章 逆転

小林芳子は夫にそんなふうに言われ、顔色がさっと曇った。だが今ここで噛みつくわけにもいかない。彼女は小林富男をきつく睨みつけると、胸の内で焦りを募らせるしかなかった。

会社へ駆けつけた小林多江と小林芳子が血相を変えているのとは対照的に、小林富男はそこまで必死ではない。彼には見えていたのだ。姪の小林茉由はやり手で、しかも葉山社長と懇意にしている。

葉山社長の素性も、すでに探りを入れて把握していた。だからこそ、弟を今すぐ敵に回すつもりはない。小林茉由が会社を渡さないと言うなら、背後の葉山墨も動くに決まっている。

会社を取れないうえに弟とも拗れるくらいなら、ここは一旦「いい人」を演じておく。小...

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