第440章 私を避けなくていい

だが、この感情は愛などではない。前半生のあらゆる経験が入り混じった、複雑怪奇な情動だ。

 窓辺から明るい日差しが降り注ぎ、高橋隆一の姿を照らす。彼はまるで全身から光を放っているかのように見えた。

 鈴木夏美の視線が、その端正な横顔、すらりと伸びた背筋、そして長い脚をなぞる。胸の奥が不意に揺らいだ。

 長い年月が過ぎても、高橋隆一は少しも変わっていない。キャンパスで初めて出会ったあの頃のままだった。

 だが、私はどうだ? 度重なる苦難に折檻され、すっかり見る影もなくなってしまったのではないか。

 時間が巻き戻ったかのような錯覚に陥る。鈴木夏美の脳裏から惨たらしい記憶が消え失せ、二人の出...

ログインして続きを読む